山行日 1962年8月7日~10日
メンバー (L)溝越、渡辺、別所
日増しに暑さが激しくなっていく都会を嫌った三人の反逆児が8月6日の21時の急行瀬戸に乗り込み一路南にこれから台風の本場四国に...。
ロマチックなムードを漂わしているように宣伝されている瀬戸内海はガスがかかっているが意外なほど期待外れである。石鎚山登山下車駅である伊予西条で食料を買い集め登山口の西之川に。薄暗くなった西之川に着いた時は夜汽車の疲れが出て悪童三人とも静かな夜を送る。
明るくなった6時半、渓流の音に目を覚まし昨日炊いた"めし"に缶詰の味気ない食事である。瓶ヶ森への道はお塔橋を渡って真直ぐ名古瀬谷を遡る。急坂になる前の橋から上方に大森山が見えるがその中腹に大森鉱山が望まれる。この鉱山があるためこの辺りの渓は鉱毒により青白く濁っている。橋を渡ってすぐトンネルを抜けるといよいよ急坂となり、背後になった大森山が振り返るごとに低くなっていくのが唯一の楽しみである。喘登の末ようやく尾根上の常住に着く。ここの正しい名前は石土宗総本山五大力講本部出張所常住院とのことであり、とても長い名前である。常住小屋は名前に反して無住で壊れかけた小屋で付近にはゴミが散らかり、あまり感じが良くないが尾根の右にこの場所より少し高いピークがあり登り道もあるので行ってみると素晴らしい岩峰の子持権現山、伊吹山、岩黒山、熊笹の間に反射して見えるうえ、小屋と良い初展望は最高であり三人共"瓶"に来て良かったとのことである。鳥越を過ぎてからは三人共バテ気味。どんどん急坂となる。しかし石鎚が見えてきたので早く瓶ヶ森からの展望にありつくため依然ペースは落ちていない。やっとのことで急坂と分かれ尾根を越えると一面熊笹に覆われた瓶ヶ森の氷見二千石原の下端に出る。
瓶ヶ森はピークが二つあり通称瓶ヶ森と呼んでいるのは女山で、神社のあるピークは男山である。ここからの展望は最高でロマンチックなムードを漂わす瀬戸内海を眼下に今治市、西条市を望み特に極印木谷を隔ててそそり立つ石鎚の姿は雲取山より低いとはとても考えられない。テントを張り終わり薄暗くなった熊笹の上に座ってスケッチしていると、もう太陽もだんだん落ちてきてテントは夕日に照らされて三人とも明日の御来光を楽しみに強風に煽られテントの灯は消えていった。
朝、一面にガスがかかっていたが頂上に出かけた。視界ゼロの憂き目にあって足取りも重く今日のコース石鎚山へ出発。
子持権現山は"瓶"からの道からしか登ることはできない。また急なので頂上から鎖が垂れ下がっている。荷物を持っては困難なので基部に荷を置いて登った。ここでも運命の女神は我々に味方せず視界ゼロ。権現からシラザ峠を経て1401mのピークを巻いて熊笹の茂った平坦な伊吹山の頂上に立つ。この辺りからやっとガスが切れ、下部に岩壁を巡らした瓶ヶ森等展望良好、伊予富士も見ることができる、ここから鬱蒼たる木々に包まれた名野川越を過ぎ、岩黒山を巻いて土小屋に出る。この道は5万分の1とは大分違っている。ここでは人が多いのですぐに逃げる。ここからは少しの間、尾根のだらだらした登りが続く。天気の良い日は九州方面まで見えるとのことであり展望最悪。石鎚山この鎖小屋に早く着いたので小さなキャンプ場ではあったが良い場所に張ることができ、夜明峠を経て剣山前社森に行く。剣山が行場で岩が大変切り立っているのと強風のため凄いスリルを味わう。三人ガタガタ、夜雨に降られ渡辺君が他のテントに避難。朝、小雨だが頂上に向かって出発。一の鎖下に荷を置き天狗岳に行き視界ゼロで乾パンを食べて下りる。石鎚から面河に下る道に愛媛大学の小屋があり、この辺りから時々石鎚山の切り立った岩壁を見ることができる。小屋から30分くらい下ると御来光滝の見える場所に出る。黒縁の木々の間に真白い線を引いたような光景に三人共疲れも忘れ眺める。30分くらい歩くと尾根の右に道をとり沢に出る。ここから急坂を一気に下ると1時間くらいで鳥居のある登山口に出、ここが四国一の渓谷美を誇る面河渓であり、登山口の所は名所の一つ熊淵である。ここから渓谷美を楽しみながらバスの終点関門に短いほどにすぐ着いてしまう。
関門からバスで約4時間で松山市に着き市電で夏目漱石の"坊ちゃん"で有名な道後温泉に着き今日の宿をとる。
8/7 | 西之川(7:30) → 常住(9:45~10:50) → 鳥越(11:45) → 瓶ヶ森(14:25) |
8/8 | 瓶ヶ森発(9:00) → 子持権現(9:25~10:20) → シラザ峠(10:40~10:50) → 伊吹山(11:03~11:30) → 土小屋(12:20~13:00) → 二のクサリ小屋(14:30) |
8/9 | 小屋発(10:30) → 天狗岳(11:00~11:50) → 愛大小屋(12:45) → 望御来光滝(13:15~13:20) → 登山口(14:30~13:50) → 面河山荘(15:00) → 関門(15:23) → 松山(19:00) |