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那須岳
斉藤 芳弘

山行日 1966年5月5日
メンバー (L)小池、山本(義)、佐藤(史)、小林、斉藤(芳)、村上、他1名

 黄金週間、つまり飛石連休のこと。この週間こそ長い間、手ぐすね引いて待っていた国鉄の稼ぎ時とか。でも今年は出足が振るわず低調だとか。それが功を奏したのか、私達の山行は静かな上に好天が重なって楽しい登山ができた。
 バスを降りると春とは思えぬ冷風に吹かれて身を縮める。ここで皆さん朝食。茶臼岳は白い煙を噴き上げる活火山、その姿は灰色の器を被せたような感じ。一方、私達の登る朝日岳は赤茶けた岩肌を直に見せ、所々残雪を残してそそり立っていた。鞍部を過ぎるといよいよ登り。岩の露出する道は次第に高度を上げていく。それでも大したことなく登って行ける。
 頂上に着くとこれまた風が強い。しかし、カッカしている体には気持ちが良い。その上360度の好展望は、やはり登った人だけに与えられるものであろう。
 ところで小池さんが言うには「このまま三本槍岳を経て帰ってもまだ早いので、旭岳まで行こう」と言う。この発言に皆んな賛成。
 頂上からの下りは赤いべべ着た女性軍が先頭。この色は青空にも合うし、緑の何とか松にも合って美しいが、ただ町中ではどうとも言えない。
 下りはヨイヨイ上りが辛い、しかしこう言うのは僕だけ、皆さん足が達者なのでスタコラスタコラ登ってしまう。三本槍岳に着いた時やっぱり風が強い。やんなっちゃうな、モォ。長居は無用、早々に下る。途中、残雪で遊ぶ。雪滑りとでも言うのかな。中にはそのまま木に追突する人もあったようだ、この遊びもほどほどに止めないと下着までびしょ濡れになる。さてそろそろ出発しますか。目前に聳える旭岳は美しい姿を見せてはいるが、道は土水で歩きづらいことこの上もなく、その上腹が空いて腹の虫が住み難いらしく唸っている。こうなると腹に力が入らずピン干。それでも投げ出す人もなく、チョッピリ遅れただけ。ようやく先頭を歩いている小池さん達が休んだので、ねをあげずに済んだ。昼食は小池さん特製の「お汁粉」、これは効いた。疲れているところにバッチリと効いた。お餅らしき物まで入っているから純粋の「お汁粉」。そのためかどうか知らないが、旭岳へ登るのは中止、皆んな疲れていたから気が甘くなったんだね。
 食後の団欒はいつも楽しいものである。下山したのは4時頃だと思う。運悪くバスの停留所まで1時間歩く。途中、桜の花が咲いていて、やっとこの地方にも春が来たらしいことを物語っていた。


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