思い出の山?何でとてつもない題なんでしょう、誰にしたって登った山は全て思い出として残っているでしょうに、一体そのうちのどれを思い出したら良いのかしら。
頭の中と心の中は思い出してもらおうと山達が押し合いへし合いです。はい!それでは先着順に1ページ分ね、一番は誰?
夏の白馬岳、初山行です。初恋の山などとよく言われますが例に漏れず、山恋の始めの山でした。何しろ海の香が好き、なんて言ってた高校3年生はこの山行ですっかり山が好きになってしまい、以来山の一点ばりなんですから、何と言っても功績は大なるものです。奇妙な表面模様のある大雪渓、せせらぎなんてものには程遠い沢の轟音、六角形のテントにシュラフ、お花畑のクルマユリ。失敗もありました。葱平のお花畑でお昼休みをしていたら、岩の陰にいた監視員に黄色いベレーの下から怒鳴られたこと。お花は折らないように気をつけてたんですけれど、それでもだめなんですって。頂上は渦巻くガスの中、強風に追い立てられました。それでも3000mちかい山頂に立てて大満足、安曇節を半分覚え、かくして山キチ一人誕生いたしました。
指折り数えて?年前だったね。大きなザック借りて、シュラフも借りて、奥秩父縦走に出かけたっけ。三条の湯で日が暮れて夕食も食べずに寝てしまった。翌日、足の痛いこと。北天のタルまではどうやら行ったものの、同行3名すっかり弛んでしまって、また三条の湯まで戻ったっけね。北天のタルではご飯にジュースをかけた人。サオラ峠はとっても明るかったね。紫の花がひともと、その向こうに大菩薩嶺が大きなうねりを見せていた。峠を駆け下る途中、小学生の一団に会ったわね。みんな赤い顔して元気に登って来たっけ。
丹波から落合まで、小型トラックに乗せてもらったんだ。ガタガタの車で、エンスト何回か、エンジンに水汲むのにポリタンを持ち出して手伝ったっけ。バスと列車で杣口まで行って1Km歩いて暗い中でテントを張ったわね。明くる日、金峰目指して琴川の車道を登ったんだけど、お昼に沢へ下ったら登るの嫌になって、そして帰ってきてしまった。結局、6日間、山の頂を一つも踏まず、背中にザックの擦り傷を作ってお終い。でも楽しかったわ。
3番目、穂高合宿です!場所は横尾、初参加の合宿だった。かたつむりみたいに、お家を背負って横尾への道を一列縦隊。BC地に着いた時は青息吐息。もう進むのはまっぴらの状態である。テント2張、夕食はテンプラ。朝は食当とてまだ暗いうちに起きた。夜明けには未だ間がある。暗い中に吐く息が白く、沢音ばかり聞こえる。空にはこぼれ落ちんばかりの星の数。その中から、見る間に3つ4つの流れる星くず。星っていうものはこうも簡単に落ちるものなのかしら。
涼風とうぐいすの声、朝日に輝く前穂東壁、梓川の瀬音が主役の(もちろん人間なんかちっぽけな点景にしか過ぎません)合宿だった。
涸沢カールから見るバラ色の常念、蝶の連山。這松の紅い芽、重太郎さん、遠く懐かしい白馬、そして槍、笠の峰々、ジャンダルムの魁異な岩壁。最後の夜は河原で大きなシラビソの倒木を焚いた。火の粉は巻き上がり、手を伸ばせば届きそうな星空では白鳥が大きく羽ばたいている。
翌日、山越さんの碑に詣でて合宿を終わった。
以上、残りはまた。
次回は播磨氏に。猛登!!