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足拍子岳
川田 昭一

山行日 1972年7月2日
メンバー 野田、播磨、別所、川田、鈴木(嶽)、庭野、松本、他1名

 上越線土樽駅のプラットホームは沢山の登山者で溢れていた。我々は直ぐ蓬峠への道を歩き出す。蓬峠に近づくにつれ名前が解らない高山植物(僕だけが花の名前を知らなかった)が沢山咲いている。松本さんがあれは「白山ちどり」、続いて庭野さんもこちらには「こばいけいそう」二人とも偶然に恋人にでも遭ったかのような驚きとはしゃぎようである。蓬峠から足拍子岳へ向かう縦走路にもニッコウキスゲが三分咲きの状態で我々の目を楽しませてくれる。しかし、こんなのんびりした状態も足拍子岳に近づくにつれ縦走路は痩せて両側はスッポリ切れ落ちている。こんなコブを登ったり下ったりして次第にコブの高さがピークに迫っている。足拍子岳のピークは10人くらい立てる狭い所である。遮るものは何もなく見晴らしの良いピークである。ピークの真下には土樽の駅が目に入るが直接駅に下る道はないそうである。
 積雪期だったらラッセル訓練がてら尾根通しに登れそうな感じである。足拍子岳ピークにて大休止した後、土樽駅ではなくもう一つ先の越後中里駅に下るよう切り開かれた道を下るのである。やはり登ってきたのと同じ大小のコブを巻いたり越えたりしているためか、時間の割にはピッチが上がらない。
 途中「展望台」という両側が見事に切れ落ちている所がある。ここからは足拍子沢の雪崩で磨かれたスラブやルンゼ、それに岩峰等が目に入る。しばらく眺めていると高い所に位置するルンゼ、岩峰、それにしがみついているようにして枝を出している松等が霧に包まれてきた。包まれた所と包まれない所がはっきりして、見ている景色全体に迫力が出てきた。大きなスクリーンを通して山水画を見ているという感じである。緊張した中にもちょっとした息を抜ける時間だ。この展望台から1ピッチで荒沢山に立つ。足拍子岳の頂上より広く平らな所である。小休止した後、すぐ下り始める。荒沢山と次の無名峰との間のコル目がけてどんどん下る。下る途中、すぐ真下手の届きそうな所に土樽の集落が見える。最低コルの近くに沢通しの道があるのではないかと想像しながら下る。コルに下り切ると案の定、最近切り開かれた沢通しの道があった。一方、尾根通しに柄沢山に向けての道もあった。沢通しの道を下ることにする(土樽集落がすぐ近くに見えるから)、沢身から外れぬように忠実に道は下っている。途中、休まずに集落まで下れると思っていたが意外に時間がかかる。2回くらいの小休の末、やっと林道へ出た。何人かの人は歓声を上げて喜んでいた。
 ここより中里駅まで約1時間、のんびり歌や雑談をして歩く。


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