山行日 | 1984年8月26日 |
メンバー | (L)高橋(千)、伊藤、熊田、岩崎、岩崎(孝)、古矢、勝部(久)、小林、佐藤(裕) |
皆から茅ヶ岳は夏行く山ではないゾ~~~、と言われ、それならば暑い頂上でスイカを食べようと、熊田さんが参加してくれるのをいいことに、スイカの他にいろんな果物を持って登った。
韮崎駅6時出発。タクシーで登山口まで行き、深田記念公園で朝食にした。既に果物が出始めている。7時出発。女岩の水場で水筒をいっぱいにし顔も洗う。いよいよ急登となる。茅ヶ岳着9時。あー見えない―八ヶ岳、南アルプス―周りはガスで真白。9時20分出発。金ヶ岳着10時30分。12時まで大休止。ザックを下ろさないうちに、スイカ、スイカの声。ガスがかかっても夏の日差しは強い。スイカは暑い時に食べるのが一番だーと一番先に手を出してガブー。その後はキュウイ、モモ、ナシ、リンゴと果物でお腹一杯。東大宇宙観測所へ下山。浄居寺バス停までのアスファルト歩きの1時間も暑かった。2時着。バス停までだいぶあるので、民家で電話を借りてタクシーを呼び韮崎駅に戻った。みんなの言葉、今度は冬に来よう。
高橋(千)さんをリーダーとする伊藤さん、岩崎さん夫妻、勝部(久)さん、熊田さん、佐藤(ゆ)、古矢さんそして私の9名は8月26日朝6時、韮崎駅をタクシーにて出発。前夜は駅前のサッカー少年像の前で古矢さん25回目の誕生日を祝う会が行われ、今まで食べたことのないようなおいしいケーキをご馳走になった。ここ数年、私は自分の誕生日でさえ、過ぎてから気付くという有様で、友人が誕生日を祝う姿に感激し、山仲間とはいいものだとつくづく思う。
さて、6時25分柳平の登山口にて下車、6時30分深田久弥記念公園で朝食。公園というにはあまりにも寂しすぎ、石碑があり、あとはゴミで一杯だった。いよいよ登山開始。だらだらとした登山道を登り始める。どうやら天気はよさそうでホッとする。始めの30分ぐらいはきつかったが、だんだん自分のペースで歩くようになると楽になった。7時35分休憩。8時5分女岩に到着、流れ落ちる水で皆の喉を潤し、水を補給する。水はとても冷たく顔を洗うと汗が引っ込み、元気が出た。そして出発。道はだんだんと急になり、足元を確かめながら一歩一歩足を進める。途中、深田久弥氏終焉の地という墓標のようなものがあり、思わず手を合わせた。茅ヶ岳は以前あまり知られない山だったが深田氏がここで亡くなってから、訪れる人が多くなったという。余談になるが、深田氏が亡くなって十数年、"日本百名山"にも出てくるが、氏がよく山登りを共にした小林秀雄氏、今日出海氏も、もはやこの世の人ではなくなった。時の流れを感じずにはいられない。私は百名山のうち6座しか行っていないが、行ってみて氏の文章とかなり様子が違っていた。交通が便利になり短時間で簡単に登れるようになったことも影響しているだろう。これは喜んでいいものか、悲しんでいいのか、私は後者のような気がする。そんなことを考えながら黙々と足を運ぶ。
伊藤さんの頂上は近いの言葉で元気を出し、更に登り続けると急に山頂に飛び出した。山頂は平らでわりと広く、既に2パーティがいた。9時ちょうどだった。私たちが登った時、わずかに雲の向こうに八ヶ岳が見えたが、あっという間にガスの中に消え、それから20分待ったが姿を現わさなかった。記念撮影の後、私たちは金ヶ岳へ向った。今度は下り、また登って金ヶ岳へ着くのだろう。途中、大きな岩の上で一本とり、目の前にある金ヶ岳を目指して登り10時15分金ヶ岳到着。そこで待望の熊田さんからのスイカを食べ、12時まで休憩。暑い時のスイカはいっそうおいしく感じられる。皆マットを敷いて思い思いに寝転がっていた。マットの上にはスイカ、ナシ、リンゴ、キーウィ、モモなどが並べられまるで果物屋さんのような豪華なものであった。夏とはいいながらも草花は秋の様相を呈している。景色はガスで見えず残念だった。
写真を撮るといよいよ下りだ。私は前に下りで足を捻挫して皆に迷惑をかけているので、細心の注意を払って一歩一歩確実に下りた。40分ほど急な道を下ると道幅が広くなり、12時50分に1回休憩し、そして1時5分、東大宇宙開発研究所を右に見てしばらく行くとアスファルトの道に出た。
ようやくホッとし、緊張が少しほぐれると顔が日焼けで痛いのに気付いた。伊藤さんはロスアンゼルス五輪のゾーラ・バットだと言って裸足で歩き出した。日光で道路は焼けるように熱い。30分ほどでまた靴を履いていた。伊藤さんはいつまでも子供のような心を持ち続けているような方だと思う。岩崎さん御夫婦はまるで仲良しの友人同士のように明るい。実は私は帰りの電車の中で佐藤さんに聞くまで御夫婦だとは知らなかった。勝部さんは赤ちゃんのやさしいお母さんで、家事なども大変なのに山への情熱はすばらしく、シンの強い方だと思った。熊田さんはやさしい裾野の広い大きな山のような方だ。日本の母の高橋さんは悠揚な慈母を連想させ花にも詳しい。山のことをとてもよく知っている古矢さんは親切で暖かみあふれている。そして佐藤さんは笑顔の素敵な素直な女の子という印象を受けた。何か失礼があったらお許しください。そんなことを考えながら歩いていると2時5分バス停に着いた。そこでタクシーに連絡をとり、2時30分駅に着いた。帰りの電車の中で今回の山行をあれこれ思い出し、その余韻を楽しんだ。夏休みのなかった私にはとても爽やかな夏の思い出ができました。色々ありがとうございました。