気象衛星(ひまわり)から送られてくる雲の画像を見ると、今までのものとは少々違ったところが目立つ。それは、今まで白っぽく映っていたシベリア大陸の色が南側から次第に黒さを増してきていることだ。
普通、テレビや新聞に出てくる雲の写真は、赤外画像である。この画像の特徴は温度が低いものほど白く輝いて映り、逆に温度が高いものほど黒く映る。
つまり、近頃の雲の画像はシベリア大陸の地面の温度が、南の方から次第に高くなってきたことを示している。画像が春の北上を見せてくれているのである。
このように大陸の地面の温度が高くなると、冬の間日本の天気を左右してきたシベリア大陸の強い高気圧は育たなくなってしまい、安定していた西高東低の冬型気圧配置は時として弱くなったり、乱れがちになったりしてくる。そして、この高気圧の弱みにつけ込むかのように時々、日本海に低気圧が現われ、暴れ回る。
こうなると本格的な春はもう目の前だが、それまでは大陸の高気圧が強まったり、日本海で低気圧が発達したりして、不安定な状態が幾度か繰り返される。この変化が最も顕著に現われるのが、2月中旬頃から4月にかけてである。そのため春の天気は変りやすく、強風の吹き荒れる日が多い。
日本海上で暴れ回る低気圧は通常、毎時50~60キロの速度で日本海上を駆け抜けて、千島方面に去って行く。従って、南からの強風が長い期間吹き続けることはまずない。「春の南風が一日吹くと、冬の北風が三日吹く」というように南風の後には再び冷たい北風が吹き渡る。
低気圧が北海道方面に去ると、西日本方面の寒冷前線を先頭に、中国大陸から高気圧が張り出してきて、再び冬型の気圧配置に戻ってしまう。その時、各地の気温は一挙に10度以上も下がってしまう。俗に言う"寒の戻り"であるが、これ以上に恐ろしいのは寒冷前線の通過である。
強風が吹き荒れ、風向きが急に変ったり、強烈な突風が吹いたり、また、竜巻が発生する恐れもある。そればかりか前線上には発達した積乱雲が隠れていて、あちこちに落雷し激しく「ひょう」を降らせ、若芽を痛める。しかし、この春の嵐も数時間で通り過ぎてゆくのも、この時期の特徴である。