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雪上訓練
その2 八ヶ岳旭岳東稜
金子 隆雄

山行日 1986年12月13日~14日
メンバー (L)金子、高橋(弘)、湯谷

 12月13日朝、小海線の電車の窓から見える八ヶ岳は茶色の地肌を見せている。合宿前のトレーニングとして八ヶ岳東面の旭岳東稜を選んだが、雪はほとんどなさそうで見事に期待外れとなった。清里からタクシーで地獄谷へ入る。雪が全くないので林道の終点近くまでタクシーが入り、アプローチがだいぶ短縮できた。出合い小屋まで沢沿いの道を進む。
 出合い小屋からすぐに赤岳沢を見送り、しばらく沢通しに行くと二俣となる。左が権現沢、右は地獄谷本谷となる。この二俣が旭岳東稜の末端となるが、末端からは取付かず権現沢に入ってすぐのルンゼから取付く。尾根上に出ると猛烈なヤブコギが始まる。鹿島槍の悪夢が蘇る。今年は何故かヤブにつきまとわれている。俺、ヤブゴギって大嫌いなんですよ。ほどなくヤブも疎らになり痩せ尾根となる。雪が付けば素晴らしいナイフリッジとなるだろうが、今はただの痩せ尾根である。
 やがて尾根は急登となり木につかまって登るようになる。枯れた急な草付きを登り終わると肩に出る。展望が開け見渡す山々はどれも黒々として、まだ冬が来ていないようだ。時刻はちょうど正午頃で「このぶんだと今日中に行者小屋へ着けるな」などと話していたが、この上は核心部の岩壁でそうは思い通りにはいかない。五段60mの岩稜は、最初の三段は正面を登りその上は左の草付きを登る。重い荷物と登山靴で登るのはなかなか大変で、思ったより時間を費やした。旭岳に着いたときには辺りは薄暗くなっていた。沈んでいく夕日に追い立てられるようにキレット小屋へと急ぐ。キレット小屋のキャンプ場で幕営としたが、水場が凍っており雪もないため手持ちの水だけでの幕営となった。
 12月14日、朝はゆっくりと出発。朝の打合わせで赤岳は登らず早く下山しようということになっていたが、分岐の所で佐藤(明)パーティと遭遇したので一緒に赤岳の山頂を踏み、地蔵尾根を下って行者小屋に昼前に到着。明パーティのテントで一杯ご馳走になってから下山する。


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